人助けも楽じゃない(3)
人助けも楽じゃない(3)
人助けも楽じゃない(3)
そうこうしているうちに、カルピス近くのGSに着いた。
おじさんの言う通りそこにはコンビニが併設してあり、店内は明るく人のいる気配もした。
おじさんは、
「じゃ行ってきます。」
と言って車から降り、もうこれで大丈夫と思ったのか、
意気揚々と店内に入っていった。
ところが、待てど暮らせどなかなか出てこない。
時間にしたら、わずかかも知れないがえらく長く感じた。
どういうことかなとかってに想像した。
1、(おじさんの身なりがあまり貧相だったので、店員が疑い相手にしなかった。)
2、(おじさんと店員が意気投合して世間話に花が咲いた。)
3、(実は店員はいなかった。おじさんは必死に中を物色していた。)
しかし、どう考えてもどれも当てはまりそうになかった。
仕方がないので、車から降り店内に入ってみることにした。
ちっちゃなコンビニで、店内は商品もわずかで簡単な軽食とコーヒーが飲める
程度の構えだった。
店員は2名いて、一人は30代くらいの男の人、もう一人は20代の女の人
(実は、若作りしているが30代後半で化粧でごまかしていたのかもしれない。)がいた。
おじさんと、店員がにらみ合っているのが目に入った。
おじさんは、
「売ってくれなくちゃ困るよ。車が動かないんだから、家に帰れないんだから。」
と盛んに自分の都合をすごい剣幕でまくし立てているようだった。
「さっきから何度も言ってるでしょう。だめだって。」
「それじゃ困るんだよ。何とか売ってくれよ。」
タンクがなくて売れないのかもしれないと勝手に想像し、
「ペットボトルなら車にあるけど、それじゃだめ?」
と言ってみた。
「そうではなく、ここに来た車に直接入れるしかセルフの店はできないんですよ。」
「もし、持ち帰りで売ったら営業停止になっちゃうんですよ。
法律でそうなってるんでから。」
そういうことか、それならいくら粘っても駄目だと思い、おじさんに、
「法律でそうなってるんだから、しょうがないよ。何とか次の手を考えましょう。」
と言って、あきらめるよう促した。
おじさんは、しぶしぶ「弱ったな。」と言いながら、肩を落として出てきた。
「私の職場に、灯油を入れるポンプがあるから、それで入れてみましょう。」
「ああそうですか。ほんとにすみません。」
と言って、少し希望が持てたらしくて、明るいトーンになってきた。