懺悔（2）
2017.07.13
カテゴリ：雑感
懺悔（2）
（2）
しかし、おのぼりの私が知る由もなく、正確に答えれるはずもないのですが、
普通なら、「すみません。良くわからないもので。」
と躊躇なく断るのですが、
その時は、そのうら若き女性のすがるようなまなざしに接したとき、
知らないとは言えなくて、
ここまで乗り継いできた列車の駅で、確か六本木というのがあったような、気がしてきて
全く自信も根拠もないのに、
「違うと思います。」
と自信ありげに重みのある低い声で言ってしましました。
そして、いいことをしたと得心しながら、開いたドアから電車に乗り込み、
その女性が別のホームへ行くのを見届けました。
地下鉄は、駅と駅の間がすごく近いので１,２分で次の駅へ着きました。
そこの駅名表示を見て、唖然としました。
なんと、六本木一丁目でした。
やばーーい。
ひょっとしたら、その人は、恋人と待ち合わせしていて、今日プロポーズを受けることになっていたのかもしれません。
ひょっとしたら、大事な就職の面接で上京してきたのかもしれません。
電車を一本の乗りちがえたせいで、人生が変わることだってあります。
わたしは、なんてことをしたんだ。
すぐにでも電車を降りて、その人に伝えたいとおもいましたが、もう手遅れです。
もう２度とあることはないだろうし、会ったとしても分からないだろうとは思いながら、
恥ずかしさと、申し訳なさで、
自責の念に駆られて、こころ落ち着かない一日でした。
懺悔です。
