男三人珍道中(2)
男三人珍道中(2)
(2)
出てきた天丼を見て、またびっくり。 天丼なのに、エビがない。
見たところ、なんだかわからない魚らしい天ぷら2尾、人参、カボチャの天ぷら、シイタケ。
これを見て食欲げんなり。
でも、さっきの若い店員の他に、かなり太った黒ずくめのおばさんが出てきてこちらを見ている。
まさに、文句を言わずに食べろと言わんばかりだった。
箸を立てて食べてみると、さっきの魚はなんとイワシだった。しかも、2尾。
節分じゃあるまいし、
「キスの天ぷらならまだしも。 イワシ2匹も食えるか。この値段でこの具はないだろう。」
ときっぱりと男らしく大声で、心の中でどなり、おいしそうに食べた。
相手の非を認め、優しく礼を尽くす紳士である自分を、これほど悔やんだことはなかった。
刺身はというと、これも期待にたがわず、見事なものだった。
なんと、しっかり筋の入ったカツオ。
刺身といったら、マグロでしょ。
そのカツオは、見るからに固くて筋張っておいしそうに見えた。
やはり、この店はポリシーが一貫している。
店内を見て想像した通りのサービスを提供していた。
それでも、3人とも一生懸命食べた、と思ったら食べたのはわたしだけで、
2人とも、「もう無理。」と言ってどんぶりに3分の1くらい残していた。
相手を気遣うやさしい紳士はわたしだけだったようだ。
さっさと帰ろうと思い、「会計お願いします。」と言ったら、「1700円です。」
と返ってきた。
消費税抜きの価格で案内されていたのだ。